現代では幼少期の親子間の『愛着が不十分』だったせいで、人間関係を作ることが極端に苦手だったり、心身的に不安定な人が増えているのではないかと言われています。
では『愛着』とは何でしょうか?
またどうやって『愛着』は十分になるのでしょうか?
今回はこの『愛着』について調べてみました。
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愛着とは?
『愛着』を辞書で引くと『慣れ親しんでいる人や物に心をひかれ、はなれがたく感ずること。』という意味のことが書かれています。
加えて、心理学における意味としてWikipediaには
他人や動物などに対して築く特別の情緒的な結びつき、とくに幼児期までの子どもと育児する側との間に形成される母子関係を中心とした情緒的な結びつきという意味でも使われる。≪引用元:Wikipedia≫
とあります。
そして、特に母子関係について『愛着理論』としてジョン・ボウルビィが以下の様に提唱しました。
愛着理論(あいちゃくりろん、Attachment theory )は、心理学、進化学、生態学における概念であり、人と人との親密さを表現しようとする愛着行動についての理論である。子供は社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子供は社会的、心理学的な問題を抱えるようになる。愛着理論は、心理学者であり精神分析学者でもあるジョン・ボウルビィによって確立された。≪引用元:Wikipedia≫
愛着はどうやってうまれるのか?
生まれたばかりの人の赤ちゃんは母親から栄養(母乳やミルク)を与えられ愛情のこもった世話(おむつを替える、あやすなど)を受け、幼児になれば後追いや駄々こねなども含めて、母親との接触を喜びます。
一方母親は赤ちゃんの微笑や発声(喃語)、注目を受け、幼児になれば成長した子どもとの関わりに喜びを感じます。
このように母子はお互いに満ち足りた感情や安心を保つことで、親子の絆、情緒的な結びつき、つまり『愛着』がうまれるのです。
絵にしてみました。
①(母)世話をする
↓
②(子)笑う、発声する
↓
③(母)かわいい、守りたいという感情が芽生える
↓
④(子)この人は安全、安心だ、と思う
この①から④の繰り返しが愛着をうむんですね。
他の動物と違い生まれたばかりの人間の赤ちゃんは、自力で体を動かすこともできず、自分を守る手段がありません。
そこで他人に自分を守ってもらうように働きかけるための仕組みが愛着であり、身近な大人との情緒的な結びつくことで自分の安全を得るための『本能的な生きる知恵』だと考えられています。
愛着が育まれるために…愛着行動
赤ちゃんから少しずつ自分でできることが増え、母親との分離もできるようになる幼児への成長段階で、愛着が育まれるための行動が表れてきます。
特にストレス下における状況で愛着があると思われる特定の相手(ここでは母親)に対して親密さを求める行動を起こします。
それを『愛着行動』と言い、生後6ヶ月から2才ぐらいまでの3つの行動に分類されます。
1.発信行動
愛着の対象の注意や関心を引くため、世話をしてもらうための行動。
泣く、ぐずる、声を出す、手足を動かす、じっと見つめる、表情を作る、など。
2.接近行動
愛着の対象に自分から近づいていく行動。
後追い、しがみつく、すり寄る、抱きつく、抱っこをせがむ、など。
3.定位行動
愛着の対象を探して確認する行動。目で追う、声がした方を向く、など。
「トイレぐらいひとりにして…」って何度思ったか
でもそれがあったから、しっかりと愛着が育まれたんだ。
そう思うと…なんだか報われる気がします。
愛着の発達段階は4段階
愛着を安定的に形成するうえで、母親(または養育者)とのある程度長期間の相互的なかかわりが重要となります。
その長期間の継続的な関わりを、ボウルビィは4段階に設定しています。
第1段階(生後2~3か月)
自分と他者との分化が不十分、愛着は未形成で他者ならだれにでも泣いたり微笑かけたりする。
第2段階(生後6か月ぐらいまで)
母親に対して特によく微笑むなど、特定の人物に対する働きかけが増える。
第3段階(2~3歳まで)
母親を安全基地として、一定の範囲内では安心して探索や行動するようになる。愛着行動のひとつ接近行動が増え(後追いなど)、見知らぬ人に対して警戒するようになる。(安定した愛着関係が築けている証拠。)
第4段階(3歳以降)
母親が一旦離れても「戻ってくる」ことを理解できるようになるため接近行動も見られなくなり、感情や動機も洞察可能になり安定する。
私自身、そんなに子ども好きじゃなかったし、わが子が生まれてすぐから「かわいくて仕方ない」って感じではなかったけど、段々かわいくなって。
でも言うこときかなかったり、思うように子育てできずに子どもに辛くあたったり…しちゃってたなぁ…
それでよかったんだなぁって、今は思えます。
接触を選んだアカゲサル(ハーローの代理母実験)
ハリー・ハーロー(ハーロウ)という学者が、生まれたばかりのアカゲザルの乳児を母親から離し、代理母で育てる実験を行ないました。
代理母のひとつは哺乳瓶がとりつけられている針金でできた感触の冷たいワイヤーマザー(針金の母親)、もうひとつは針金が柔らかいテリー布で覆われヒーターによって体温近くまで暖められたクロスマザー(布製の母親)の2種類が用意されました。
それまでの心理学では、子どもは栄養を与えてくれる存在(ワイヤーマザー)に愛着を示すと考えられてきました。
ところがアカゲザルの子どもは、明らかにクロスマザーを好んだのです。
小ザルはおなかがすくとワイヤーマザーからミルクを飲みますが、すぐにクロスマザーへ戻ります。
また音の出るびっくりするようなおもちゃを飼育小屋に入れたときも、小ザルは怖がってクロスマザーにしがみつきます。(↓動くとさらにコワい。)
ハーロー(ハーロウ)はこうした実験から、愛着はミルクだけで生まれるのではなく、母の温かいスキンシップによって形成されるのだと考えました。スキンシップによって安心感を得ることができたアカゲザルの子どもは、新しい環境や対象を探索することにもチャレンジできました。
動画の後半では、アカゲザルが興味を持ちそうな数個のおもちゃとワイヤマザーかクロスマザーを入れた部屋にこのアカゲザルの赤ちゃんを入れます。
ワイヤーマザーが入っているときは、他の布(おむつ?)のようなものにすぐさま飛びつき不安そうに周りを見回します。
しかしクロスマザーが入っているときは、まずクロスマザーに飛びつきしがみきますが、しばらくするとクロスマザーから離れて、他のおもちゃを探索し始めます。。
ハーロー(ハーロウ)、アカゲザルの実験の後日談
ただしこのハーロー(ハーロウ)のアカゲザルの実験には後日談があります。
ハーロー(ハーロウ)はクロスマザーによって正常な愛着や成長が得られると考えたのですが、実際にはアカゲザルの子どもは、成長とともに自分を傷つけたり仲間とつきあえないといったさまざまな問題を見せました。
そして正常な成長をするために何が必要かを実験し(布からスポンジに替える、揺らす、同年代の仲間との遊びを取り入れる、など)、ようやく正常なサルに育つことがわかりました。
ハーロー(ハーロウ)のこの実験はアカゲザルにひどいことをした、という批判も大きく、アメリカで動物実験の際の倫理規定が定められるきっかけともなりました。
愛着とは?ハーロー(ハーロウ)のアカゲザル実験(動画)でわかるふれあいの重要性、まとめ
・ボウルビィが母子間の愛着について提唱したのが愛着理論
・愛着とは情緒的な結びつき
・食事よりも肌の温かさやスキンシップで愛着はうまれる
です。
大人になってから人間関係に悩んだり生きにくさを感じることも、この愛着が育っていないことが理由、とも言われています。
大切な人と触れ合ってますか?
『愛着』の対象は母親に限っているわけではなく、養育者という立場の人ひとりとの間にうまれたら良い、とされています。(一番望ましいのは母)
さらにひとりではなく数人でも良い、という意見もあります。
・上手く甘えられない
・反抗的
・対人関係が深まりにくい
・自信がない
とか。
医学的な判断基準で定義されてる障害もあるけど、なんでもかんでも障害とか病名をつけるのには反対したいです!